夕暮れ、なけなしの焦燥感で家を出た。西日を追ってそれとなく歩いた。
知っている道を歩きたくなくて知らない道を選ぶ。
下校中の学生達の群れに会って、
同級生とかどうでも良くなれたらいいのに、
と思った。
補充する必要のなさそうな自販機を通り過ぎようとすると
君がよく飲むらしい炭酸飲料が売っていたから買ってしまった。
matchの方が売っていたら僕は泣いてしまったに違いない。
僕と君の価値観の違いは、トイレに流された金魚の憂鬱に似た味がした。
そういえばこれを飲むのは初めてなんだな。
炭酸が抜けて口紅のような味がする。
きっと君が誰かとキスをする時、
思い出すのかこの缶ジュースだと思うと、
ちょっと性的。
今日もまた夕焼けを憎むことしか出来ない。
君から通知が来るまで今日は帰らないぞ、なんて
夏を終わらせるのが下手くそだから
人を忘れることも出来ない。
人気のない夜の住宅街には西日が落ちて星が瞬いている、誰のためでもない夕飯の匂いがして、少し憂鬱くさい。
散歩と称しつつ2駅も歩いてしまったけど
だからといってどうということは無いし
都会の2駅なんてコンビニが乱立していることよりも価値がない。
大丈夫、まだ僕は駅前で人を待っているフリをするけど、
君はそんなことないし、
愛した人に好きと伝えることを怠っていないから
僕はまだかろうじて人間で入れるような気がしている。
愛してるよ、とさえ言えなくなったら僕は君は世界は、
ってところが気持ち悪いっていうか厨二病っていうか。
職質されないようにもう今日は帰ってしまおうか。百数十円で数キロを買って帰ろうね。地獄と憂鬱で出来た僕の部屋に。
明日は片付けられるかな。